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大阪高等裁判所 昭和56年(う)658号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

理由

〈前略〉

控訴の趣意は原判決の事実誤認を主張し、原判決には次の四点について事実を誤認したもので、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるというので、以下これに対する当裁判所の判断を順次示すこととする。

第一点 いわゆるマーキングの状態を確認することをもつて注意義務の内容と認定した原判決の誤りについて

論旨は、要するに、原判決は被告人に対し地下埋設物の本件ガス導管の位置等を路面に明示するいわゆるマーキングの状態を確認し、これを常に鮮明にして工事関係人にガス導管の位置等を認識、徹底させる義務がある旨認定しているが、本件当時においてはマーキングを行う意味は単に試験掘りをした箇所を示すにとどまり、その方法も試掘をした者が随意、心覚え程度に印をしていたに過ぎなかつたのに、原判決は本件事故後に関係当局者がたびたび研修会を開くなどしてマーキングによる明示を義務づけたことを本件当時においてもマーキングの明示が義務であつたと誤認した点に誤りがある、というのである。

しかしながら、原審において取調べられた関係各証拠のうち、本件獺川雨水幹線築造工事の起業者である神戸市(水道局雨水課)と被告人が工事課長として勤務していた株式会社五島組との間で右工事の請負契約を締結するにあたり神戸市から右五島組に手渡され、右請負契約の内容となつている「下水道工事特記仕様書」(大阪高裁昭和五六年押第二三一号の二のうちの一部)によると、請負人が工事施行に際し地下埋設物の安全を確保するため守るべき事項として、下水道工事地下埋設物取扱示方書のⅡ一般的事項の(1)に「……請負人又はその現場代理人は工事箇所のそれぞれについて、その工事に着手する以前に、地下埋設物の位置をよく知つておかなければならない。……」とあり、同(2)で「……地下埋設物を確認するために試掘を行ない、位置を確認した上で掘さくを行なわなければならない。」としていることが認められ、更に、小河秀夫、石本広平、新改達輝、加藤幸雄及び上原善彦等、工事関係者の検察官に対する各供述調書によると、地下埋設物の埋設状態の詳細は試掘の結果を図示した試掘図等を確認すれば最も正確に知りうるわけであるが、試掘図は工事責任者である工事請負人の現場監督者の保管するところであり、掘削に当る現場作業員としては掘削工事を進める際、その都度右試掘図を閲覧し、埋設物の状態を確認するのは煩瑣であるうえ、試掘図をみて直ちに現場の埋設物の埋設状態を把握できるとはかぎらない。そこで地下埋設物の位置等を路面に明示するマーキングが考えられた。従つて、マーキングをする目的は、単に試掘箇所についての試掘者の心覚えの役目というにとどまらず、現場作業員に対し地下埋設物が存在し、その位置、深度及び種類等を知らせることであり、若しマーキングがなければ、試掘図によつて確認しないかぎり、現場作業員としては埋設物の所在がわからず、安全かつ適正な工事が不可能となり、それ故、マーキングが薄くなつたときには、現場監督としては再度マーキングをする必要があり、これをしない場合には、埋設物がある位置を試掘図等によつて十分把握したうえ、埋設物周辺の工事に立会い、右図面に基づいて現場作業員に対し適切な指揮監督をしなければならない旨、地下埋設物の位置等を路面に明示するいわゆるマーキングの重要性を強調していることが認められる。なるほど、所論が指摘するとおり、本件工事の監督員を勤めた神戸市吏員の永井登の検察官に対する供述調書や本件現場代理人たる被告人の補佐役の地位にあつた杉山勝の原審証言等によると、当時の実情はマーキングそのものについて余り重視していなかつた趣旨の供述部分があるけれども、これに他の供述部分を加えて全供述を総合的に通覧するときは、右各供述は各供述者のそれぞれの立場からの単なる弁解ともみられるとともに、地下埋設物に損害を与えずに道路の掘削を安全に遂行するうえでマーキングの果たす重要性を否定し去つているものとは到底解せられない。また、本件事故後、神戸市の関係当局者によつてたびたび研修会が開かれ、そのなかでマーキングの重要性に触れられていることが関係各証拠によつて窺われるが、当局者によるこのような一連の措置は、上原善彦の検察官に対する昭和五二年六月一六日付及び同年七月五日付各供述調書等によると、本件事故発生の原因にかんがみ、事故防止マーキングの重要性を確認するとともに、マーキング励行の徹底を期し、再教育をしている、というのである。

以上のとおり、道路掘削に際しては路面にいわゆるマーキングをすることが地下埋設物損傷の事故発生を防止するうえで最も有効適切な手段であり、これを果たすことが現場代理人に課せられた重要な職務であることが認められるのであつて、現場代理人たる被告人に対しいわゆるマーキングの状態を確認し、これを常に鮮明にして工事関係人にガス導管の位置等を認識、徹底させる義務があると認定した原判決は正当であり、この点、原判決に所論のような事実の誤認は存在しない。

第二点 被告人が本件掘削につき適切な指揮監督を行わなかつたと認定した原判決の誤りについて

論旨は、要するに、被告人は本件現場の掘削の前に、原審相被告人裴政憲に対し試験掘りをした跡のある本件掘削現場の路面を指し示しながら、「その辺にガス管があるぞ。」と注意を促したのであつて、これを聞いた同人は、地山掘削作業主任者の資格があり、かつ右試験掘りにも立会つていたことからも、ガス管の存在を十分に承知していたはずであり、また、ガス管を直接損傷した金壽鎬も、車両系建設機械の運転者として、右裴もしくは被告人に対し地下埋設物の有無等を確認すべき義務があつたことは明らかで、いずれにしても、本件爆発事故は右両名の重大な過失に基づいて発生したものであつて、裴に対し右のように指示した被告人は業務上の注意義務を尽したものというべきであるのに、これを否定し、被告人に義務の懈怠があつた旨認定した原判決は事実を誤認したものである、というのである。

そこで訴訟記録及び各証拠を検討するのに、本件工事につき発注者である神戸市と請負人である前記五島組との間で交わされ本件請負契約の内容となつている前掲「下水道工事特記仕様書」によると、下水道工事のための道路掘削に際し、地下埋設物の安全を確保することは請負業者の現場代理人としての義務であることが明らかであるとともに、現場代理人は前説示の如くいわゆるマーキングを常に鮮明にしておき工事関係人に地下埋設物の位置等を認識、徹底させるほか、右仕様書中の地下埋設物取扱示方書Ⅱの(3)にも記載されているように、「……地下埋設物のある場所で工事する場合には、毎日現場出勤に当つて、それぞれの作業の責任者を集めて地下埋設物の取あつかい、その他についての注意を与えなければならない」ことが認められる。ところが、被告人の捜査官に対する供述調書等の関係各証拠によると、本件爆発事故発生前、本件ガス導管が埋設されていた掘削現場の地表にマーキングが印されていたものの、それが容易に確認しえないほど薄くなつていたというのであるから、前説示のとおり、本件工事現場付近の試掘図を自ら保管管理し、右ガス導管の埋設状態を正確に把握しうる立場にあつた被告人自らが現場に立会い、若し立会うことのできない場合には補助監督者をして立会わせ、掘削作業に当る現場作業員に対し右ガス導管の埋設位置等を的確に指示するなどして、作業を安全かつ適正に進行させるべきであることは当然であり、ことに、本件では、被告人が本件事故直前、本件ガス導管埋設場所付近に立寄つた際、現場作業の責任者である原審相被告人裴政憲の指揮、誘導のもとに金壽鎬が右埋設場所近くにおいて掘削機械(ドラッグシヨベル)のエンジンを始動させ、掘削作業に入ろうとする態度にあつたことを被告人において現認していたことが関係各証拠によつて認められるところであるから、ガス管等の埋設場所付近における堀削には機械掘りが厳禁され、手掘りすべきであることを熟知していた被告人としては、右裴に対し本件ガス導管の正確な位置等を告知するとともに、同所付近において機械掘りをしないよう指示する等適切な指揮、監督すべきであつたことは明らかである。しかるに、右裴に対してただ単に「この辺にガス管があるぞ。」と告げたのみで、他に前記の如き適切な指示を与えず漫然とその場から立去つた被告人の注意義務違反は明白といわなければならない。所論は裴政憲らに重大な過失があつたことをもつて被告人の過失を否定する根拠としているようであり、原判決挙示の各証拠により右裴に過失のあつたことは原判決判示のとおりであるが、同人らに右のような過失が認められるからといつて、これらが被告人の過失についての前記認定に影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。従つて、被告人に対し、本件ガス導管のマーキングの状態を確認せず、これが不鮮明になつているのをそのまま放置したうえ、本件事故直前、掘削現場に立寄つた際、裴に対し「その辺にガス管があるぞ。」と告げただけで、漫然その場から立去り、本件掘削につき適切な指揮監督を行わなかつた過失を認めた原判決に所論のような事実の誤認はないというべきである。

第三点 ガス管損傷後の過失について

論旨は、要するに、原審相被告人裴政憲は本件ガス導管を損傷したことに気づき、直ちに大阪ガスに電話連絡しているので、大阪ガスにおいて適切な指導がなされていたならば、右ガス管損傷後の本件ガス爆発は発生しなかつたと考えられるから、本件爆発事故の発生が被告人の過失に基づくものである旨認定した原判決は事実を誤認したものである、というのである。

そこで訴訟記録及び各証拠を検討するのに、神戸市と前記五島組との間の本件請負契約の内容になつている前掲「下水道工事特記仕様書」によると、同書中の埋設物に対する特記仕様書2に「請負人は工事着手前に埋設物に対する防護方法及び安全対策を検討し……なければならない。」としたうえ、3に「掘削範囲内又は接近して埋設物がある場合は、当該埋設物の管理者と密接な連絡をとり、現地立会を求め、その指示に従うものとする。」4に「工事中または埋戻後埋設物に異常がないか否か常に留意するとともに異常の早期発見のため必要な機器(ガス検知器等)を常置しなければならない。」更に、5に「請負人は安全対策組織を結成し責任体制を明確にするとともに作業員の安全教育を行ない、埋設物に対する危険性を徹底すること。」6に「万一事故発生した場合の措置は施工計画書に明記し、その措置が緊急時に実行出来るように常に訓練しておくこと。」とそれぞれ明記されていることが認められるところ、右五島組が請負つた本件工事の現場責任者である被告人において、本件ガス導管の管理者たる大阪ガスと密接な連絡をとつたり、本件掘削に際しガス検知器等を常置する一方、安全対策組織を結成し、作業員の安全教育を行い、万一事故が発生した場合の措置が緊急時に実行できるように常に訓練しておく等の諸施策を尽した形跡は窺われないのであつて、右の事実に加えて、原判決挙示の各証拠によつて認められる原判決判示の本件ガス爆発の経過に照らせば、本件ガス導管を損傷させ、本件爆発事故を惹起させた責任は、大阪ガスが適切な指導をしたか否かにかかわりなく、右の諸条項を守りつつ工事を進めたとは認められない被告人にあることは明らかであるといわざるをえない。この点に関しても原判決に所論のような事実誤認を見出だすことはできない。

第四点 大阪ガスのガス導管埋設方法の過失について

論旨は、要するに、金壽鎬が掘削機械により損傷した本件ガス導管は道路面から約一七センチメートルの深さに、しかも暗渠内に埋設されていたわけであるが、右のような埋設方法は、通商産業省令第九八号ガス工作物の技術上の基準を定める省令第七四条所定の「導管は下水等のための暗渠内に設置してはならない。」との規定、更には、道路法施行令第一二条三号所定の「ガス管の本線を埋設する場合その頂部と路面との距離は1.2メートル(工事実施上やむをえない場合にあつては0.6メートル)以下としないこと。」との規定にも違反していることが明らかであつて、本件ガス導管が右規定を遵守して埋設されていたならば、ガス管を損傷することも、また、ガスが暗渠内に充満し、これに引火することもなかつたと考えられるのに、右の点を考慮することなく、被告人に対し本件ガス爆発の結果発生の責任を認めた原判決は事実を誤認したものである、というのである。

しかしながら、原審で取調べられた司法警察員大森良春作成の昭和五二年三月一〇日付検証調書(特に、そのうち原審記録二一〇丁のマーキング跡に関する記述及び二九〇丁の図面)、獺川雨水幹線築造工事用試験掘図面(大阪高裁昭和五六年押第二三一号の三)、小河秀夫の検察官に対する供述調書及び被告人の検察官に対する昭和五二年三月一八日付供述調書を総合すると、昭和五一年一〇月下旬ころ本件ガス導管の損傷箇所から道路中央寄りに約二メートルの地点において試験掘りが実施され、同所に直径一五〇ミリメートルのガス導管が地表から0.46メートルないし0.65メートルの深さに埋設されていることが現認され、それが試験掘図面に、直径一五〇ミリメートルのガス管が右道路を横断して0.5メートルないし0.65メートルの深さに埋設されている旨記載され、被告人のもとに保管され、被告人が右図面を見て本件道路掘削工事に当つていたことが認められるのであるから、本件現場付近の掘削工事に際しては、被告人において、既に、その付近に直径一五〇ミリメートルの本件ガス管が所論のいう規定に違反して0.6メートル未満の深さに埋設されていることを知つていたというべきであるのみならず、このような現場における道路掘削工事に当つては、機械掘りは厳禁され、手掘りにより地下埋設物を損傷しないよう慎重に作業を進めてゆくべきであり、被告人にこの点の適切な指揮監督をすべき義務を怠つた過失が認められることは前説示のとおりである。してみると、ガス導管設置者の埋設上の瑕疵を問うまでもなく、被告人の過失によつて本件爆発事故が発生したことは明らかといわなければならない。

なお、所論が掲げる通商産業省令は七四条二項本文にあたるところ、但書として「やむを得ない場合において、さや管その他の腐しよく防止のための措置が講じられているものは、この限りでない。」旨の例外的な場合が附加されていることや、その前後の規定の内容からみて同条項は、専ら導管が腐しよく等の損傷をきたさないようにその防止を目的として設けられたものと解せられ、ガス導管が所論の暗渠内に設置されていたからといつて、直ちにそれが被告人の前記過失に消長をきたすものではない。

これを要するに、所論の諸点を検討しても原判決に事実の誤認を見出だすことはできない。(以下、省略)

(矢島好信 杉浦龍二郎 内匠和彦)

〈参考・原判決中の「罪となるべき事実」個所〉

被告人辰井一衛は土木建築請負業を営む株式会社五島組の従業員で、右五島組が神戸市から請負い、昭和五一年一〇月一二日以降施工していた神戸市東灘区魚崎西町四丁目四番一八号先道路から同市同区住吉宮町三丁目一番一号先道路に至る南北四八三メートルの獺川雨水幹線築造工事に関し、五島組の現場代理人(現場監督)として、補助監督である五島組従業員杉山勝及び同濱本裕輔の補佐を受けて、本件工事の施工全般を統轄管理する業務に従事していたもの、被告人裴政憲は、土木建設請負業を営む金城建設の経営者で五島組から本件工事のうち、同市同区住吉宮町一丁目一二番一五号先道路から同市同区同町三丁目一番一号先道路に至る二八〇メートルの区間につき、路面掘削作業等を請負い、被告人辰井一衛等の指揮監督のもとに掘削機械を使用して路面掘削等の業務に従事していたものであるが、昭和五二年二月八日午前八時頃から、被告人裴政憲において、松本こと金壽鎬に掘削機械を操作させ、同人に指示誘導して、直径一五〇ミリメートルのガス導管が地下約一七センチメートルの位置に埋設されていた同市同区同町一丁目一二番一二号松井美佐男方前付近道路を全長約二九メートル、幅約四メートルにわたつて掘削するに際し

一、被告人辰井一衛は、本件工事の現場責任者である右五島組の現場代理人として地下埋設物の本件ガス導管の位置等を路面に明示するいわゆるマーキングの状態を確認し、これを常に鮮明にして工事関係人にガス導管の位置等を認識徹底させるように努めるべきはもとより、右掘削にあたつては、その現場に立会して、被告人裴政憲及び右金壽鎬等に対して本件ガス導管の埋設位置を的確に指示し、かつ本件ガス導管埋設付近の路面を掘削機械により掘削させないよう指揮監督し、自らこれを行えない場合には、補助監督である前記杉山勝または同濱本裕軸に右各事項を行わせ、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、不注意にもこれを怠り、本件ガス導管のマーキングの状態を確認せず、これが不鮮明になつているのをそのまま放置したうえ、同日午前八時四〇分頃、右掘削現場に立寄つた際被告人裴政憲に「その辺にガス管があるぞ」と告げたのみで、漫然その場から立去り、本件掘削につき適切な指揮監督を行わず、かつ前記杉山勝または濱本裕軸にマーキングの状態の確認および本件掘削につき適切な指揮監督をするよう指示しなかつた過失により

二、被告人裴政憲は、本件工事の路面掘削作業を右五島組から請負つた土建業金城建設の経営者として、埋設物である本件ガス導管の位置等を明示するマーキングの状態を確認し、これを常に鮮明にして工事関係人にガス導管の位置等を認識徹底させるべきはもとより、本件掘削現場は、地下に本件ガス導管が埋設されている場所であつて、付近には前記金壽鎬のほか自己の使用する労働者小方幾三等数名が作業していたのであるから、掘削機械による本件ガス導管の損壊によりガスが漏出して爆発し、右労働者に危険を及ぼすおそれがあつたので、本件ガス導管埋設付近の路面を掘削機械により掘削させないようにし、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、不注意にもこれを怠り、本件ガス導管のマーキングの状態を確認せず、これが不鮮明になつているのをそのまま放置したうえ、同日午前八時四〇分頃前記記載のとおり、本件掘削現場において、被告人辰井一衛から「その辺にガス管があるぞ」と告げられたにもかかわらず、本件ガス導管の位置についての確認および掘削機械による掘削を避けて手掘りによる掘削を行うことを配慮せず、漫然前記金壽鎬を誘導して同人に本件ガス導管埋設付近の路面を掘削機械(ドラッグシヨベル)により掘削させた過失により、右各過失が競合して、同日午前八時四五分頃、右掘削現場において、前記金壽鎬の操作する掘削機械の先端に装着された直径約一二センチメートルのチゼルによつて、本件ガス導管を穿孔して上下二か所に直径一三センチメートルの穴をあけさせ、同日午前九時二七分頃までの間に少なくとも約五〇四立方メートルの都市ガスを噴出させて、同市同区住吉宮町一丁目一二番一五号先道路付近から同市同区同町二丁目一一番二三号先道路付近に至る南北約一三三メートルの地中に埋設されていた旧雨水暗渠(幅約1.4メートル、高さ約1.6メートル)に右都市ガスを充満させ、同日午前九時二七分頃、その付近の何らかの火源により同ガスに引火爆発するに至らしめて、右旧雨水暗渠の履工板等を飛散させる等し、その飛散した破片や、右爆発時の振動等による家屋ガラス戸の損壊等により、付近を通行中の桃谷るり子(当四七才)を頭蓋骨骨折、脳挫傷による出血多量のため即死させたほか、別紙負傷者一覧表記載のとおり、同所付近に居合わせた右工事作業員、付近住民等前記金壽鎬ほか一七名(ただし被告人裴政憲については同表番号18を除く)に対し、同表記載の各傷害を負わせるとともに、被告人裴政憲は、右掘削の作業を行う場合において、掘削機械の使用によるガス導管の損壊により労働者に危険を及ぼすおそれがあつたのに、掘削機械を使用し、掘削の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を論じなかつたものである。

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